ら僕はこの人に人生の指針を与えられたと思う。
久しく忘れていたのだけど、元々僕は教育には興味があった。
その切欠を与えてくれたのがこの人だった。
でも、なんかWikiを見ると悲しくなる。
2つの「差別的表現」によって記事のほとんどが埋められている。
彼の作品についての言及ではなく、差別事件の顛末とその対象となった表現ばかりが頭に残ってしまう。
作品のカテゴリとしては「児童文学」に当たるらしい。
でも、実際読んでみると「児童」に読ましていいものではないことが多いのも事実。
僕は中学時代に当時読める全てを読んだけど、二度と読みたくないものもあった。
でも、そこに真実性というか、人間臭さを感じた。
当時の僕の境遇にも通じるものがあったのかもしれない。
僕は、自分で言うのもなんだけど、おそらく比較的裕福に育ててもらった。
その一方で、やっぱヤンチャな時期もあって、中学生の時に通わせてもらってた塾をサボっては遊びまわっていた。その時に知り合った、いわゆる「不良少年」たちは、学校で遊ぶ友達とは違い、テレビドラマの中だけの話だと思っていた家庭内暴力やネグレクトの被害者もいた。
僕には当時二つの世界があった。
学校という世界。夜の街の子供たちの世界。
どちらも同じ子供たちの世界なのに、違うルールで動いていた。
夜の街の方が僕には人間臭くて、人として信用できた。
それに通じる生き生きとした子供たちが、貧しくとも逞しく生きている世界が灰谷健次郎の描く物語にはあった。
そして、社会の歪みと子供たちに見せるべき理想との間で懊悩し葛藤する大人たちの姿が描かれていた。
美しい物語ばかりではないけど、そんな灰谷健次郎の作品が僕は好きだった。
そして、彼は僕にソクラテスを引き合わせてくれたのだった。