人の記憶と言うものは、どうやら改変されてしまうものらしい。
目に見える風景なんて、その見えるものにどんな意味を与えるかによって変わっちまう。
僕は確かに、親戚一同で泊まったホテルで、その庭が満月に照らされていると言うが、親に聞けばその旅行中ずっと雨降りだったらしい。少年野球の合宿で、僕はひとり宇宙空間にでもいるような経験をしたが、当時の友達は僕のイビキを聞いたという。
僕が愛した人や、僕を愛してくれた人が幻だったら面白い。いや、面白くはねぇか。
幾度となく、僕の口からは永遠の愛が約束された。そして、多分それは守られている。僕は今でもきっと彼女らを愛している。僕の不確かな記憶の彼女たちを。
結局はさ、認識の問題。って言っちゃうと乱暴過ぎるけど、今の自分を説明するのに人は過去の自分を証拠にするけどさ、今僕らが絶対と信じていることのどれほどのことが、200年前に絶対だっただろうか?
僕らが知り得る歴史は「残す意図」によって残された歴史だし、都合のいいことばかりが残っていると思ったほうがいい。言わば僕の記憶のように、自分に都合の良いように改変された事実。
あなたは誰?
そう問われたらどうする?
過去に自分を求める?
それとも未来に?
未来はきっと今をどう捉えるかによって決まる。
さっきからなんかちょっと離れたとこにいる女の子に睨まれてる気がしてならないが、熱い視線を送られていると思い込むために。