読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

幸福のヒント?

僕による僕が幸福になるための、ヒント集にするつもりだけど、だいたい愚痴、ときどき妄想、たまに詩っぽいの

Even if you don't love me I still love you

She said ... 物語

彼女に初めて出会ったのは、新たに着任の挨拶を兼ねた保護者面談の席だった。

真面目そうな印象を受けた。

志望校や現状の確認など一通りの質問を終えて、こちらから

「何かご質問はございますか?」と聞くと彼女が口を開いた。

「先生は結婚してるんですか?」

一緒にいた母親に間髪入れずに「そんなこと聞いちゃダメでしょ!」と強く窘められて、少し落ち込んだ様子だった。

僕は場をつくろうように微笑んで見せて、左手を見せ

「残念ながら、まだ、だね」

と答え面談を終えた。

母親の強すぎる窘め方に僕は少し違和感を覚えたが、この質問には何の疑問も抱かなかった。

 

それから、彼女は毎日のように自習に来た。

受験生だし、当たり前なのだけど、もう少し僕に自覚があればおかしいことに気付いたのかもしれない。

最初は、わからないところがあると質問をしてきた。その頻度はどんどん高くなり、次第に勉強とは関係のない質問が増えてきた。

「どこの出身?」

「今いくつ?」

「彼女いるの?」

「どんな高校生だったの?」

・・・etc

勉強の合間に息抜きの会話をするのも大事ではあるし、会話をする上で相手の情報は必要だろう。質問が僕のことばかりなのも、それほど気にならなかった。生徒との信頼関係を築く上でコミュニケーションは欠かせない。

しばらくすると、質問だけでなく「先生聞いて!」と学校での出来事などをいろいろと報告をしてくるようになった。文化祭準備の事やクラスの役割分担で揉めた話、図書室の司書さんに褒められた話、通学途中の道で見かけたカエルの話、登校中に見える山の話・・・etc、会話の量が増えること自体は歓迎すべきなのだけど、僕にはどうしても拭えない違和感があった。その違和感は、最初の面談の時に感じた母親の厳しすぎる窘め方にも感じたものと同じで、最初は「あれ?」と思う程度のものだったけど、最終的にそれは確信に変わった。家庭や友達についての会話が一切出てこないのだった。話さないのには理由がある。僕は話したくないことを無理に聞くようなことはしなかったが気にはかけていた。

だからあの日もそれほど慌てる事なく、対処できたんじゃないだろうか。

最初のうちは・・・。

 

雨が明け、空気から湿気が少なくなった頃。

せっかく晴れていた空が曇りそうなほど暗い表情の彼女が来た。

そして、いつもと違う

「先生、聞いて・・・」

今にも降り出しそうな彼女の表情に、僕は自分の表情を合わせて話を聞いた。

話は親子喧嘩の顛末だった。どっちが良いとか悪いとか、原因の話はさておき、この落ち込み様、尋常とは言えない。話のところどころで気になる「いつもお母さんは~」と言う言葉。きっと喧嘩してなくても、ストレスを溜めてしまっていたんだろう。長い歴史のある問題であることが感じられた。だから、そのとき僕の口から出たのは

「大変だったね。よく頑張ったね」

と言う言葉だった。

と言うかそうとしか言えなかった。

話しているうちに涙が溜まっていた彼女の目はさらに輝きを増して、とうとう決壊した。そして彼女は抱きついてきた。

誰もいないから良かったけど、泣いている女子高生に抱きつかれるおっさんの図、犯罪の臭いしかしない。しかも、恥ずかしながら抱きつかれると思った瞬間にメタボなお腹を引っ込めてしまった自分が悲しい。

一通り泣き、彼女が落ち着くまでそうしていた。泣き声が止み、しゃくりあげるだけになったとき、僕は彼女を体から引き剥がした。そのとき触れた肩は華奢で、まだまだ子供っぽさの残るものだったけど、引き剥がしたときに僕の鼻にはお化粧のではない女性の匂いが感じられた。心を引き締める。

20cmほどある身長差から、彼女の涙が僕のシャツの胸にシミを作っていた。それを見て、彼女は恥ずかしそうに、何かを考えていて、僕と目を合わせずに言った。

「先生、いい匂いするね」

そのときつけていたのは、確かサムライ。

アランドロンサムライ EDT 100ml

アランドロンサムライ EDT 100ml

 

 「あぁ、加齢臭対策でコロン付けてるよ」

僕は、確かめるように自分の袖口をかいだ。まだ、加齢臭に負けてなかった。

「わたし、この匂い好き、もう一度かいでいい?」

と彼女が言う。僕が袖口を彼女の顔に近づけようとした瞬間、また抱きついてきた。

今度は身体を密着させ、「泣き付く」ではなく「抱きつく」だった。僕にはお腹を引っ込める時間さえなかった。彼女の柔らかさは、紛れもなく女性のそれで、僕は自分が男であることを呪った。幸い、メタボなお腹が緩衝材になってくれたから、たぶんそのとき変態扱いされずに済んだんだと思う。

「ちょ、ちょっと!」

自分の声がうわずっているのがわかったが、そんなこともどうでもいい。とにかく、この状況をどうにかしなければならない。突然の出来事に戸惑いながらも、いろんな意味でやばい状況なので、僕はまた彼女の身体を引き剥がした。すると何を勘違いしたか、彼女は顔を上げ、キス顔していた。おいおい、大人はそんなあからさまに口突き出さないぞ。

そんな彼女の仕草を見て、僕は少しおかしくなってしまい、冷静になれた。冷静になると、自分の職業の危機を勝手に持ち込んで来た彼女に対して、ほんのちょっとだけ腹が立った。相変わらず子供っぽいキス顔している彼女のオデコを指で弾いた。

「いったぁ~い!」

期待していたものとは違う痛みを感じた彼女は驚き、僕から離れていった。

「何するのよ!?かわいい女子高生がお礼にキスしてあげようって言うのにぃ」

おでこをさすりながら彼女は言った。

「いらん。そんなもの!ったく見られたらクビになっちゃうでしょ?それに、お礼にキスなんて、そんな安売りするもんじゃない!そういうのは好きな人としなさい」

といつもより語気を強めに言った。

すると彼女は小さな声で

「初めてだったのに・・・好きな人なのに・・・なんでダメなの?」

直球ど真ん中。さすがにこれなら僕でもホームランを打てそうな感じ。でも、僕はこれを場外ファールにしなければいけない。このとき僕はメタボで良かったと初めて思った。

「自分勝手に好きってだけでしていいもんでもないだろ?それに、30過ぎのおっさんに何言ってんのさ、おっさん騙されないんだから!」

と、冗談っぽく嗜める。

基本頭のいい子だった。

「っち、騙されないか!これをネタに強請ろうと思ったのに!」

喜んでいいのかわからないが、とりあえずその場の雰囲気だけはいつものように、先生と生徒に戻すことができた。若干、女性に対する不信感は募ったものの、これで良かった。でも、気持ちは嬉しかった。

 

その日の授業。

Even ifとEven thoughの使い方を教えた。

理解を確かめるために、例文を書かせた。

彼女が書いたのは

”Even if you don't love me I still love you.”

 僕は直した

”Even if  though you don't  can't love me  I still love you”

 

 

 

結果としては、僕が間違っていたね。

でも、当時は僕が正解だった。正解でなければいけなかった。

キス顔はとてもかわいかったよ。

悲しい思い出だと思うとき、僕は”I still love you"を消さなかったことを後悔する。

でもね、君との思い出は大切な宝物だから、僕は、人間としての僕は、何一つ後悔していない。君もそう思ってくれてるといいけど・・・

 

~to Be continued?~

重ねて申し上げます。

フィクションです。

おっさんの妄想ですから。

じゃ、そう言うことで・・・

これの続きって感じで

 

monknight.hatenablog.com

 

 

monknight.hatenablog.com