「ねぇ先生の夢ってなに?」
そう、君は聞き返した。
「夢かぁ・・・そうだねぇ・・・」
西日が差しこむ眩しい席で僕は夢を語った。
「なんてね、いい歳こいたおっさんが、言うべきことじゃないのかもだけどさ、でも、きっと叶う叶わないも含めて、夢を見るのに遅すぎるってことはないと思うんだ。」
と、いつものお仕事の用のセリフ「だから君も志望校を最後の最後まであきらめないで頑張ろうな」と僕が言おうとするのを遮って、彼女は言った。
「先生の夢叶うとこ見てみたい」
おいおい、そんなこと言うもんじゃないよ、と思いながらも真剣な彼女の眼差しに僕はたじろいだ。
まっすぐで、真剣で、何も隠そうとしない強い意志が宿っていた。
自分が正しいと信じ切っているそんな目。
たぶん、ほんの一瞬だったはずだ。そう願いたい。僕はその目に吸い込まれていた。
秒針の音が妙に大きく聞こえた。
肌を焼くほどの西日はもうすっかりと弱くなり、君の頬を赤く染めていた。
あれから、もう何年経ったのかな?
僕の夢は相変わらず叶っていない。
君の夢はどうかな?